いまなら備長炭の炭焼き職人になれる!

炭焼き体験談

 

 

前項では職人さんの厳しい世界を感じたと思いますが、もうすこしソフトに炭焼きの経験をするという方法もあります。

 

 

「田舎暮らし」で自然の癒しに囲まれて、趣味を活かした仕事でのんびりする。こうした田舎暮らしに果敢に挑戦している人達もいます。

 

 

田中淳夫氏著の「田舎で起業!」(平凡社新書)」を参考にしてみましょう。その中に「Iターンで炭焼き職人に」という人が紹介されています。以下抜粋。

 

 

宮大工、指物師、漆器職人、染織家など、伝統技術を受け継ぐ職人がいますが、その道の専門家ではあっても、時代遅れ、変化を嫌うといったイメージもあります。こうした職人の一つが炭焼き職人かもしれません。しかし、最近は木炭の消費量は上向きで、ハイテク素材としても注目されています。

 

 

この伝統技術を受け継ぎつつ、ビジネスとして成立させているのがM氏です。和歌山県南部は、備長炭という独特の炭を焼く伝統があります。強い火力が安定、長持ちするので、高級な炭焼き料理など業務用としても人気が高い炭です。

 

 

ここで新たに炭焼きに取り組むのが、山深い西牟婁郡大塔村に、Iターン炭焼き職人の先駆け的存在となるM氏です。地元福岡の大手電機メーカーに勤めていましたが、雑誌で炭焼き職人募集の記事を見つけました。募集内容は紀州備長炭を焼く研修生の求人でした。

 

 

M氏は休暇を利用して大塔村を訪れ、約一週間の体験学習に参加しました。炭焼きの仕事のきつさを知り、やり方次第では生活できると睨んだそうです。その後わずか一年で独立します。同時に研修生を一人雇い入れます。技術が充分に身についていないのに研修生を受入れたのは、一人でやるより二人の方が作業の効率がいいからということです。

 

 

原木の伐採、運搬、ら窯入れ、窯出し、選別や箱詰め、出荷というように、体力と手間暇かかる作業が多くあります。仕事の効率を考えたうえで人手を求めています。

 

 

炭焼きで大変なのは原木の調達。原木に適したウバメガシがまとまった量のある山を探し、山主と交渉、そして、立木を買取る契約をしてから伐採、運び出します。M氏は山に索道を引き、切り倒した原木は谷間に渡してあるケーブルで吊り下げ、人里まで下ろすようにしました。そこで切り分け、重機を使ってトラックに積み込み、窯のある場所まで運びます。機械化によって、原木の確保を容易にしています。

 

 

M氏は、営業にも力を入れています。独自に販売先を開拓し、東京の炭問屋にも直接卸すようにしました。M氏は年間を通しコンスタントに焼き続けます。そうしないと技術は磨かれず、安定供給しないと取引相手に信用されません。

 

 

近年になって、M氏はアブラギリによる「研ぎ炭」も焼き始めました。研ぎ炭は、日本刀、漆工芸、金細工、高級レンズ、IC基盤などの研摩に優れています。価値は高く、1キロ1万円以上です。伝統技術の継承と新しい分野ヘの挑戦という気持ちがあるのでしょう。このM氏はかなり勤勉のようですね。現代の炭焼き職人の姿なのかもしれません。